映画批評モリコラム キャプテン
「キャプテン」(2007/日本)
正直観る前は全く期待していなかったというと、作り手に対して失礼かもしれないけれど、この作品には自分が想像した以上にハマってしまった。あの名作野球漫画の実写映画化。確か私が中学生位の時だったと思うのだが、当時野球少年だった私も漫画や、それを元にしたアニメーションも繰り返し読んだり観たりしていたのは今でもよく覚えている。それだけに思い入れもそれなりにあるのだが、映画はその原作のを気に入っている人は勿論、原作を読んでいない人も素直に楽しめる作品になっているのがまず嬉しい。
物語は主人公の谷口君が弱小野球部のある中学へ転校し、野球部に入部、しかし彼は野球は大好きだが、決して上手とはいえない、むしろ下手クソな選手なのだが、前の学校の名門野球部に所属していたことからの周りの誤解もあって名選手に祭り上げられ、いきなりキャプテンにされてしまう・・・。
その後の主人公の必死の努力とそれが実を結んで試合の快進撃という展開は原作通りであるのだが、原作のエピソードをテンポ良く巧みに繋ぎあわせ、しかもオリジナル部分である女性の扱い方も決して彩りだけに留まらず、物語の展開を邪魔することなくうまく溶け込ませているあたりも好感がもてる。(この映画の重要なシーンで、キャプテンを引き受ける事になるさりげないシーンが中盤の伏線に絡んでくるあたり、これを原作にない女性に言わせているあたりは巧い。)
そして何よりも野球の試合のシーンがきっちりと撮られており、キャストの演技は決して巧みとはいえないけれど野球経験者を重視したというだけあって、彼らの動きが後半にリアリティと説得力を生み出している。(そういえばキャストでいえばイガラシ君を演じた少年などは原作のまんまという感じで思わずニンマリ。)決して映画史上の傑作というような部類の作品ではないし、汗と涙と努力と根性の物語をそのままストレートに描く展開は主人公を見守る家族の描写も含めてベタといってしまえばそれまでだけれども、その割にはウェットにならないのは小気味良いテンポの故か、万人が楽しめ、素直に感動できる好編に仕上がっている。
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