2007/09/14

映画批評モリコラム キャプテン

「キャプテン」(2007/日本)
正直観る前は全く期待していなかったというと、作り手に対して失礼かもしれないけれど、この作品には自分が想像した以上にハマってしまった。あの名作野球漫画の実写映画化。確か私が中学生位の時だったと思うのだが、当時野球少年だった私も漫画や、それを元にしたアニメーションも繰り返し読んだり観たりしていたのは今でもよく覚えている。それだけに思い入れもそれなりにあるのだが、映画はその原作のを気に入っている人は勿論、原作を読んでいない人も素直に楽しめる作品になっているのがまず嬉しい。

物語は主人公の谷口君が弱小野球部のある中学へ転校し、野球部に入部、しかし彼は野球は大好きだが、決して上手とはいえない、むしろ下手クソな選手なのだが、前の学校の名門野球部に所属していたことからの周りの誤解もあって名選手に祭り上げられ、いきなりキャプテンにされてしまう・・・。

その後の主人公の必死の努力とそれが実を結んで試合の快進撃という展開は原作通りであるのだが、原作のエピソードをテンポ良く巧みに繋ぎあわせ、しかもオリジナル部分である女性の扱い方も決して彩りだけに留まらず、物語の展開を邪魔することなくうまく溶け込ませているあたりも好感がもてる。(この映画の重要なシーンで、キャプテンを引き受ける事になるさりげないシーンが中盤の伏線に絡んでくるあたり、これを原作にない女性に言わせているあたりは巧い。)

そして何よりも野球の試合のシーンがきっちりと撮られており、キャストの演技は決して巧みとはいえないけれど野球経験者を重視したというだけあって、彼らの動きが後半にリアリティと説得力を生み出している。(そういえばキャストでいえばイガラシ君を演じた少年などは原作のまんまという感じで思わずニンマリ。)決して映画史上の傑作というような部類の作品ではないし、汗と涙と努力と根性の物語をそのままストレートに描く展開は主人公を見守る家族の描写も含めてベタといってしまえばそれまでだけれども、その割にはウェットにならないのは小気味良いテンポの故か、万人が楽しめ、素直に感動できる好編に仕上がっている。

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2007/08/31

映画批評モリコラム 「2001年宇宙の旅」

「2001年宇宙の旅」(1968/米・英)
いまや私は説明するまでもなく、SF映画史上どころか、映画史上に燦然と輝く名作であり、日本でも雑誌などで映画史上ベストテンなど行われると必ず上位にランクインされる程、この映画の作品の評価は揺るぎない。かくいう私も高校生の時にリバイバル上映が初見であったが、その壮大な宇宙空間の描写と深遠なテーマにすっかり魅了されて、それ以降どこかの劇場でこの作品が上映されていれば、ビデオやDVDで何回も鑑賞しているのにも関わらずつい劇場へ足を運んでしまう。そう、この作品は劇場の大きなスクリーンと大音響でなければ魅力が半減してしまうのだ。物語は人類がまだ猿であった時代から始まり、そこから知恵を授かることにより、西暦2001年には宇宙に進出までになるのだが・・・。

とここまで書いたのはいいが、この作品、特に後半は大変哲学的でかなり難解なのは事実。実は私も1度目は正直よく理解できず、その後数回鑑賞して、原作も読んだりして、何となく理解できたような箇所もあるのだが(はっきり理解したと断言できない事が情けないけれど・・・)、それでも全てすっきりしないもどかしさがある。しかしそれでもなお、その難解さが、逆に何度も鑑賞することになる魅力となりえる不思議な力がこの作品にあるのは事実だし、映像面においても、上記の何百万年間の流れを一瞬で表現したモンタージュシーンに度肝を抜かれ、その後に続く宇宙のシーンの美しさと浮遊感覚、そしてSFという未来の映画でありながら既成のクラシック音楽を多用、それがものの見事に映像にマッチしていることも強烈な印象を与えてくれたのである。

製作されてもう40年を迎えることとなるが、内容、技術面においてもこの作品ほど製作時からの時の流れを感じない作品はないんじゃないかと思えるほど、普遍的な魅力を保ち続けている。

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2007/07/20

映画批評モリコラム 2007年上半期洋画ベスト5

前回に引き続き、モリが独断と偏見で選ぶ2007年上半期に公開された新作映画BEST5、今回は外国映画を選んでみました。
①ツォツィ  ②リトルミス・サンシャイン ③善き人のためのソナタ  ④クイーン  ⑤ボルベール<帰郷> 

外国映画に関してはミニシアター系の作品が占めてしまい、やや小粒な印象で、この中でも特にダントツといえる作品はなかったのですが、これらの作品以外でも「鰐」「ブラックブック」「ラストキング・オブ・スコットランド」も印象に残り、様々な国の作品を堪能できました。

ただ気になるのはここ数年このコラムでも言及していますが、今年もアメリカ映画にこれという作品が少なく、見事アカデミー作品賞を受賞した「ディパーテッド」にしても、原版の「インファンアル・アフェア」や、過去のスコセッシ監督の諸作と比較するとやはり見劣りを感じましたし、他に世評の高い「バベル」「ゾディアック」なども確かに客観的にはかなりの力作ではあると思いましたが、残念ながら後一歩私の琴線に触れず・・・。(前者は同監督の「アモーレス・ペロス」の魅力と比較してしまい、後者はつい韓国映画の傑作「殺人の追憶」と比較してしまう・・・)まぁこれらの作品に関しては私自身、事前に過度の期待を寄せてしまうというところもあるのですが、それだけにアメリカ映画が好きな私としてはこの国に掲げるハードルはつい高くなってしまうのです。今年こそ下半期に期待したいところです。

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2007/06/07

映画批評モリコラム 「ダイナマイトどんどん」

「ダイナマイトどんどん」(1978/大映)
我が在住の大阪においては、旧作の作品が鑑賞できる映画館は 新世界の一部の映画館を除いて皆無といっていい程、所謂名画 座というものが殆ど存在しないのが非常に残念でならないのだが、 そんな中、高槻市にある高槻松竹セントラルは日本映画の旧作を 定期的に特集を組んで上映してくれており、私にとっては非常に有 難い映画館で、よく利用させて頂いている。

この作品は確か25年位 前にTV放送で観た事があったのだが、つい最近この劇場で再見、 初見時と同様、今度はスクリーンで堪能する事ができて嬉しかった。 戦後間もない昭和25年の九州、やくざ同士の抗争を民主的に解決 するために、GHQと警察の提案により、組対抗の野球大会が開か れる事に。しかし当然、試合はまともな展開になる訳はなく、グラウ ンドは殆ど喧嘩まみれの状態に・・・。といった奇想天外な物語展開を、 岡本喜八監督の職人的手腕で、快調なテンポとユーモアたっぷりで 綴っていく。

キャストは菅原文太を始めとして、当時隆盛だった東映やくざ映画の スター陣を配し、それぞれの個性を際立たせたようなキャラクター設定 が可笑しく、(特に田中邦衛扮する助っ人ピッチャーはケッサク!) それがそのままやくざ映画のパロディになっているあたりも、この監督 らしい上手さであると同時に、戦後間もない時代ゆえ、先の戦争に対す る批判がチクリと挿入されているあたりも、きっちり娯楽映画のツボを 抑えながらも、監督の反骨精神が垣間見れて、興味深い。

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2007/06/01

映画王モリコラム ツォツィ

「ツォツィ」(2005/英・南アフリカ)

昨年あたりから「ホテル・ルワンダ」を始め、日本でもアフリカを舞台にした映画が続々と公開されている。貧困や犯罪、戦争、内乱、利権を巡っての先進国の干渉等映画の題材には事欠かない問題が山積していることが要因のひとつとも指摘されているが、そんな中で南アフリカの現状を自国のスタッフ、キャストをメインにして作られたこの作品は、見事2006年のアメリカのアカデミー賞外国語映画賞を受賞した実績が示すとおり、見応えのある作品に仕上がっている。

スラム街に住む少年ツォツィ(“不良”という意味がある)は仲間と共に犯罪と暴力に明け暮れる日々。ある日1人で裕福な黒人女性を襲い車を強奪、しかしその中に赤ん坊が乗っていたことから・・・。物語はアパルヘイトが撤廃されて10数年経た南アフリカの現在の問題、貧富の格差(しかもこの格差は黒人内にも広がってきている)、そしてそれらが生み出す犯罪を描きながら、偶然赤ん坊の面倒を見ることになる主人公の心の変化と贖罪が観るものの胸を打つ。

特に主人公を演じたP・チュエニヤハエの飢えたような鋭い眼光が、劇中赤ん坊の世話をするうちに徐々に和らいでくその演技が素晴らしく(この映画を観た時、偶然映画館で映画王の番組で知り合った T氏と出会ったのだが、彼曰く“若い頃の根津甚八のような目つきやった”という表現は言い得て妙だと思った。)、残酷な行動に走る主人公が、「命」に目覚める展開に説得力をもたらしている。

決して明るい話ではないけれども、赤ん坊を奪われた黒人夫婦と主人公が対峙するクライマックスは、その主人公が最後に選択する行動と共に、悲惨な現実が大きく横たわりながらもそれでもなお、この社会に対して、彼らを信じ、希望を託したいという作り手の熱い思いを感じずにはいられない。その幕切れは観客へ何かを問いかけてくるかのような深い余韻を与えてくれる。

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2007/05/18

映画批評モリコラム 「荒野の用心棒」

「荒野の用心棒」(1964/伊・西独・スペイン)

そういえば「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」のクライマックスで、この作品のかの有名なシーンがそのまま引用され、主演したクリント・イーストウッドを含めてオマージュが捧げられていた。しかし、この元ネタとなった本作品も実は公開当時、黒澤明監督の「用心棒」の盗作として問題になったのも余りにも有名な話。確かに日本の時代劇と刀を、西部劇と銃に置き換えただけで物語の展開はそのまんまといったものだし、イタリア製の西部劇、いわゆる “マカロニ・ウエスタン”と呼ばれるきっかけとなった最初の作品であり、当時はイタリア映画とバレないように監督や役者の名前もアメリカ風に偽名を使っていたとか(まぁ盗作でもあったし後ろめたさをあったかも)・・・何だか胡散臭さ満載の映画みたいだが、それじゃあ面白くないのかといえばとんでもない、これがすこぶる面白いのだ。監督セルジオ・レオーネのケレン味溢れる演出は当時アメリカ製西部劇にはない粗野な魅力に溢れていたし、盟友エンニオ・モリコーネの奏でる「さすらいの口笛」が更に映画のトーンを決定付け、単なる盗作の枠を超えたオリジナルな魅力を与えてくれており、今思えば、原版から見事に換骨奪胎した良質なリメイク作といえる。昨今リメイクが盛んに製作されているものの、なかなか魅力的な作品が見当たらない状況、この作品の様なリメイク作を観てみたい、とふと思ってしまった。

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2007/03/30

映画批評 映画王モリコラム 「リトル・ミス・サンシャイン」(2006/米)

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「リトル・ミス・サンシャイン」(2006/米)

現在公開中のこの作品、決してお金を掛けたアメリカ映画では
ないけれど、その愛らしさゆえ絶品の味わいを与えてくれました。
物語は美少女コンテストに参加することが決まった娘の為に、
家族である父母、兄、祖父そして叔父を含めた6人が家から
遠く離れた会場へ黄色いおんぼろのミニバスで赴く道中から
そのコンテストまでを描いた典型的なロードムービー。
まずこの6人のそれぞれのキャラクターを実に手際よく紹介し、
その後一同が会する食事のシーンでこの家族の問題を浮き彫り
にさせる冒頭のわずか数十分間、このつかみだけでこの映画の
世界が見事に凝縮されていて、それぞれ個性的な登場人物の特徴
を最初に的確に把握することで感情移入でき、その後の展開を
興味深く見守ることになります。
そして「勝ち馬」を目指しながらも実は「負け犬」であるこのバラバラで崩壊寸前の家族の姿を、作り手の視線はあくまで淡々と客観的に描き、それ故に程好いユーモアと哀感が滲み出てきています。
そんなある意味醒めたタッチこそが、クライマックスのコンテストに象徴される、アメリカの競争社会に対する皮肉を強烈なものにしていますし、そこでの思わぬ出来事が、これも皮肉な事に逆に家族の再生に繋がっていくのが、しみじみとした感動を与えています。
6人の登場人物の誰もが本当に個性的で面白く、それぞれがきっちり1人立ちして描かれているのが、この作品の魅力に大いに寄与しており、それぞれに肩入れしながらも、いつの間にか最後はこの家族そのもの一体をつい応援したくなる、そんな魅力的な映画なのです。

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2007/02/19

映画批評 映画王モリコラム 

和の心を応援する嘯氣堂:水墨画を毎週10枚プレゼントします

「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(1998/英)
映画監督というより、もしかして歌手のマドンナの旦那さんとしてのほうが有名かも知れないガイ・リッチー監督。しかし彼のデビュー作であるこの作品は、映画監督としての才能とセンスを確実に見せてくれている。マフィアを相手にしたポーカーで負けてしまい莫大な借金を抱えた若者の4人組。返済の期限が迫る中、彼らはある行動に出ることに・・・。映画は冒頭からクローズアップを多用し、茶色をトーンにしたスタイリッシュな映像処理とそれにかぶさるナレーションで一気に話が進んでいき、彼ら4人の行動によって登場する様々な個性的な人物が面白く、時には激しいバイオレンスが描かれるつつも全編にどこかとぼけたユーモアが楽しいクライム・サスペンスに仕上がっている。印象としては時制をバラバラにした展開やブリティッシュロックの多用のせいか、タランティーノ監督作品と「トレインスポッティング」を足して2で割ったような感じといえばいいか。ただあまりにもスピード感溢れる展開ゆえに、数多くの登場人物を整理し切れずやや混乱しないではなのだが(この辺りはテンポを重視した監督の確信犯的演出とも思えるのだが・・・)、彼らが織り成す多彩なエピソードが後半序々にパズルのピースがはまって行くかのような展開はかなりの見物であり、ある種のカタルシスを与えてくれることに成功している。ただこの作品があまりに鮮烈だったせいか、この監督のその後の作品の評判は今ひとつ。充分に実力と才能がある人と思えるだけに、一発屋と呼ばれないよう、今後の彼の捲土重来を期待したい。

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2007/01/27

映画批評 映画王モリコラム 「バウンド」(1996/米)

「バウンド」(1996/米)

かの「マトリックス」シリーズですっかりメジャーになってしまったウォシャウスキー兄弟監督。しかしこのシリーズより前に撮り、彼らのデビュー作でもあるこの作品は、決して派手さはないけれど、面白さ抜群のサスペンス映画に仕上がっている。マフィアの金をめぐってレズビアン2人と1人の男との争奪戦が、隣り合わせた部屋という限られた空間で二転三転するストーリー展開の中、快調なテンポと緊張感で繰り広げられてゆく。その先が読めない物語もさることながら、隣同士の部屋を俯瞰で横移動しながら人物のそれぞれの動きを捉えるショットなどその鋭角的というかスタイリッシュな画面構図が随所の見られ、密室劇でありながら空間演出の豊かさとこの監督の映像センスの良さは処女作から実証されている。そういえばこの映画も“電話” が登場。そのコードを舐めるように追いかけてゆくショット等今思えば「マトリックス」でもきっちり引用されてる。予算やジャンルは異なっても同じ監督の刻印が示されているようで興味深かった。

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2007/01/25

映画評論 映画王モリコラム 「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997/米)

「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997/米)

SF小説の名作として誉れ高い「宇宙の戦士」が原作のこの作品、私もこの小説は読んでいて、まぁ随分前の事だったから細かい箇所はあんまり覚えてないのだけれども、どうも映画化された作品と原作のイメージが違う。地球連邦軍と昆虫型のエイリアンとの宇宙戦争を中心に若き兵士達の戦いの青春を描くという大まかなラインにさほどの違いは感じないが、真面目な印象が強かった原作に比べ、映画版は何だかそのパロディとも思える程、この近未来戦争物語の背景を皮肉な視点で描き切り、それに加えて容赦しない残酷描写のグロテスクさがこの世界観にさらに拍車をかけている。何だかあまり褒めていないようだけれども実は個人的にはそんなこの映画が大好きなのだ。いかにもP・バーホーベン監督らしいシニカルな演出が、一見タカ派な戦争映画を装いつつ、同監督作「ロボコップの手法を交えながら、SFであっても戦争に対する胡散臭さをじわりと炙り出してくるあたり、好き嫌い分かれるクセのある映画かもしれないが、それだけに個性的で興味深い味わいのある作品だ。

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