2007/09/14

映画批評モリコラム キャプテン

「キャプテン」(2007/日本)
正直観る前は全く期待していなかったというと、作り手に対して失礼かもしれないけれど、この作品には自分が想像した以上にハマってしまった。あの名作野球漫画の実写映画化。確か私が中学生位の時だったと思うのだが、当時野球少年だった私も漫画や、それを元にしたアニメーションも繰り返し読んだり観たりしていたのは今でもよく覚えている。それだけに思い入れもそれなりにあるのだが、映画はその原作のを気に入っている人は勿論、原作を読んでいない人も素直に楽しめる作品になっているのがまず嬉しい。

物語は主人公の谷口君が弱小野球部のある中学へ転校し、野球部に入部、しかし彼は野球は大好きだが、決して上手とはいえない、むしろ下手クソな選手なのだが、前の学校の名門野球部に所属していたことからの周りの誤解もあって名選手に祭り上げられ、いきなりキャプテンにされてしまう・・・。

その後の主人公の必死の努力とそれが実を結んで試合の快進撃という展開は原作通りであるのだが、原作のエピソードをテンポ良く巧みに繋ぎあわせ、しかもオリジナル部分である女性の扱い方も決して彩りだけに留まらず、物語の展開を邪魔することなくうまく溶け込ませているあたりも好感がもてる。(この映画の重要なシーンで、キャプテンを引き受ける事になるさりげないシーンが中盤の伏線に絡んでくるあたり、これを原作にない女性に言わせているあたりは巧い。)

そして何よりも野球の試合のシーンがきっちりと撮られており、キャストの演技は決して巧みとはいえないけれど野球経験者を重視したというだけあって、彼らの動きが後半にリアリティと説得力を生み出している。(そういえばキャストでいえばイガラシ君を演じた少年などは原作のまんまという感じで思わずニンマリ。)決して映画史上の傑作というような部類の作品ではないし、汗と涙と努力と根性の物語をそのままストレートに描く展開は主人公を見守る家族の描写も含めてベタといってしまえばそれまでだけれども、その割にはウェットにならないのは小気味良いテンポの故か、万人が楽しめ、素直に感動できる好編に仕上がっている。

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2007/08/31

映画批評モリコラム 「2001年宇宙の旅」

「2001年宇宙の旅」(1968/米・英)
いまや私は説明するまでもなく、SF映画史上どころか、映画史上に燦然と輝く名作であり、日本でも雑誌などで映画史上ベストテンなど行われると必ず上位にランクインされる程、この映画の作品の評価は揺るぎない。かくいう私も高校生の時にリバイバル上映が初見であったが、その壮大な宇宙空間の描写と深遠なテーマにすっかり魅了されて、それ以降どこかの劇場でこの作品が上映されていれば、ビデオやDVDで何回も鑑賞しているのにも関わらずつい劇場へ足を運んでしまう。そう、この作品は劇場の大きなスクリーンと大音響でなければ魅力が半減してしまうのだ。物語は人類がまだ猿であった時代から始まり、そこから知恵を授かることにより、西暦2001年には宇宙に進出までになるのだが・・・。

とここまで書いたのはいいが、この作品、特に後半は大変哲学的でかなり難解なのは事実。実は私も1度目は正直よく理解できず、その後数回鑑賞して、原作も読んだりして、何となく理解できたような箇所もあるのだが(はっきり理解したと断言できない事が情けないけれど・・・)、それでも全てすっきりしないもどかしさがある。しかしそれでもなお、その難解さが、逆に何度も鑑賞することになる魅力となりえる不思議な力がこの作品にあるのは事実だし、映像面においても、上記の何百万年間の流れを一瞬で表現したモンタージュシーンに度肝を抜かれ、その後に続く宇宙のシーンの美しさと浮遊感覚、そしてSFという未来の映画でありながら既成のクラシック音楽を多用、それがものの見事に映像にマッチしていることも強烈な印象を与えてくれたのである。

製作されてもう40年を迎えることとなるが、内容、技術面においてもこの作品ほど製作時からの時の流れを感じない作品はないんじゃないかと思えるほど、普遍的な魅力を保ち続けている。

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2007/07/20

映画批評モリコラム 2007年上半期洋画ベスト5

前回に引き続き、モリが独断と偏見で選ぶ2007年上半期に公開された新作映画BEST5、今回は外国映画を選んでみました。
①ツォツィ  ②リトルミス・サンシャイン ③善き人のためのソナタ  ④クイーン  ⑤ボルベール<帰郷> 

外国映画に関してはミニシアター系の作品が占めてしまい、やや小粒な印象で、この中でも特にダントツといえる作品はなかったのですが、これらの作品以外でも「鰐」「ブラックブック」「ラストキング・オブ・スコットランド」も印象に残り、様々な国の作品を堪能できました。

ただ気になるのはここ数年このコラムでも言及していますが、今年もアメリカ映画にこれという作品が少なく、見事アカデミー作品賞を受賞した「ディパーテッド」にしても、原版の「インファンアル・アフェア」や、過去のスコセッシ監督の諸作と比較するとやはり見劣りを感じましたし、他に世評の高い「バベル」「ゾディアック」なども確かに客観的にはかなりの力作ではあると思いましたが、残念ながら後一歩私の琴線に触れず・・・。(前者は同監督の「アモーレス・ペロス」の魅力と比較してしまい、後者はつい韓国映画の傑作「殺人の追憶」と比較してしまう・・・)まぁこれらの作品に関しては私自身、事前に過度の期待を寄せてしまうというところもあるのですが、それだけにアメリカ映画が好きな私としてはこの国に掲げるハードルはつい高くなってしまうのです。今年こそ下半期に期待したいところです。

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2007/06/07

映画批評モリコラム 「ダイナマイトどんどん」

「ダイナマイトどんどん」(1978/大映)
我が在住の大阪においては、旧作の作品が鑑賞できる映画館は 新世界の一部の映画館を除いて皆無といっていい程、所謂名画 座というものが殆ど存在しないのが非常に残念でならないのだが、 そんな中、高槻市にある高槻松竹セントラルは日本映画の旧作を 定期的に特集を組んで上映してくれており、私にとっては非常に有 難い映画館で、よく利用させて頂いている。

この作品は確か25年位 前にTV放送で観た事があったのだが、つい最近この劇場で再見、 初見時と同様、今度はスクリーンで堪能する事ができて嬉しかった。 戦後間もない昭和25年の九州、やくざ同士の抗争を民主的に解決 するために、GHQと警察の提案により、組対抗の野球大会が開か れる事に。しかし当然、試合はまともな展開になる訳はなく、グラウ ンドは殆ど喧嘩まみれの状態に・・・。といった奇想天外な物語展開を、 岡本喜八監督の職人的手腕で、快調なテンポとユーモアたっぷりで 綴っていく。

キャストは菅原文太を始めとして、当時隆盛だった東映やくざ映画の スター陣を配し、それぞれの個性を際立たせたようなキャラクター設定 が可笑しく、(特に田中邦衛扮する助っ人ピッチャーはケッサク!) それがそのままやくざ映画のパロディになっているあたりも、この監督 らしい上手さであると同時に、戦後間もない時代ゆえ、先の戦争に対す る批判がチクリと挿入されているあたりも、きっちり娯楽映画のツボを 抑えながらも、監督の反骨精神が垣間見れて、興味深い。

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2007/06/01

映画王モリコラム ツォツィ

「ツォツィ」(2005/英・南アフリカ)

昨年あたりから「ホテル・ルワンダ」を始め、日本でもアフリカを舞台にした映画が続々と公開されている。貧困や犯罪、戦争、内乱、利権を巡っての先進国の干渉等映画の題材には事欠かない問題が山積していることが要因のひとつとも指摘されているが、そんな中で南アフリカの現状を自国のスタッフ、キャストをメインにして作られたこの作品は、見事2006年のアメリカのアカデミー賞外国語映画賞を受賞した実績が示すとおり、見応えのある作品に仕上がっている。

スラム街に住む少年ツォツィ(“不良”という意味がある)は仲間と共に犯罪と暴力に明け暮れる日々。ある日1人で裕福な黒人女性を襲い車を強奪、しかしその中に赤ん坊が乗っていたことから・・・。物語はアパルヘイトが撤廃されて10数年経た南アフリカの現在の問題、貧富の格差(しかもこの格差は黒人内にも広がってきている)、そしてそれらが生み出す犯罪を描きながら、偶然赤ん坊の面倒を見ることになる主人公の心の変化と贖罪が観るものの胸を打つ。

特に主人公を演じたP・チュエニヤハエの飢えたような鋭い眼光が、劇中赤ん坊の世話をするうちに徐々に和らいでくその演技が素晴らしく(この映画を観た時、偶然映画館で映画王の番組で知り合った T氏と出会ったのだが、彼曰く“若い頃の根津甚八のような目つきやった”という表現は言い得て妙だと思った。)、残酷な行動に走る主人公が、「命」に目覚める展開に説得力をもたらしている。

決して明るい話ではないけれども、赤ん坊を奪われた黒人夫婦と主人公が対峙するクライマックスは、その主人公が最後に選択する行動と共に、悲惨な現実が大きく横たわりながらもそれでもなお、この社会に対して、彼らを信じ、希望を託したいという作り手の熱い思いを感じずにはいられない。その幕切れは観客へ何かを問いかけてくるかのような深い余韻を与えてくれる。

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2007/05/18

映画批評モリコラム 「荒野の用心棒」

「荒野の用心棒」(1964/伊・西独・スペイン)

そういえば「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」のクライマックスで、この作品のかの有名なシーンがそのまま引用され、主演したクリント・イーストウッドを含めてオマージュが捧げられていた。しかし、この元ネタとなった本作品も実は公開当時、黒澤明監督の「用心棒」の盗作として問題になったのも余りにも有名な話。確かに日本の時代劇と刀を、西部劇と銃に置き換えただけで物語の展開はそのまんまといったものだし、イタリア製の西部劇、いわゆる “マカロニ・ウエスタン”と呼ばれるきっかけとなった最初の作品であり、当時はイタリア映画とバレないように監督や役者の名前もアメリカ風に偽名を使っていたとか(まぁ盗作でもあったし後ろめたさをあったかも)・・・何だか胡散臭さ満載の映画みたいだが、それじゃあ面白くないのかといえばとんでもない、これがすこぶる面白いのだ。監督セルジオ・レオーネのケレン味溢れる演出は当時アメリカ製西部劇にはない粗野な魅力に溢れていたし、盟友エンニオ・モリコーネの奏でる「さすらいの口笛」が更に映画のトーンを決定付け、単なる盗作の枠を超えたオリジナルな魅力を与えてくれており、今思えば、原版から見事に換骨奪胎した良質なリメイク作といえる。昨今リメイクが盛んに製作されているものの、なかなか魅力的な作品が見当たらない状況、この作品の様なリメイク作を観てみたい、とふと思ってしまった。

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2007/03/30

映画批評 映画王モリコラム 「リトル・ミス・サンシャイン」(2006/米)

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「リトル・ミス・サンシャイン」(2006/米)

現在公開中のこの作品、決してお金を掛けたアメリカ映画では
ないけれど、その愛らしさゆえ絶品の味わいを与えてくれました。
物語は美少女コンテストに参加することが決まった娘の為に、
家族である父母、兄、祖父そして叔父を含めた6人が家から
遠く離れた会場へ黄色いおんぼろのミニバスで赴く道中から
そのコンテストまでを描いた典型的なロードムービー。
まずこの6人のそれぞれのキャラクターを実に手際よく紹介し、
その後一同が会する食事のシーンでこの家族の問題を浮き彫り
にさせる冒頭のわずか数十分間、このつかみだけでこの映画の
世界が見事に凝縮されていて、それぞれ個性的な登場人物の特徴
を最初に的確に把握することで感情移入でき、その後の展開を
興味深く見守ることになります。
そして「勝ち馬」を目指しながらも実は「負け犬」であるこのバラバラで崩壊寸前の家族の姿を、作り手の視線はあくまで淡々と客観的に描き、それ故に程好いユーモアと哀感が滲み出てきています。
そんなある意味醒めたタッチこそが、クライマックスのコンテストに象徴される、アメリカの競争社会に対する皮肉を強烈なものにしていますし、そこでの思わぬ出来事が、これも皮肉な事に逆に家族の再生に繋がっていくのが、しみじみとした感動を与えています。
6人の登場人物の誰もが本当に個性的で面白く、それぞれがきっちり1人立ちして描かれているのが、この作品の魅力に大いに寄与しており、それぞれに肩入れしながらも、いつの間にか最後はこの家族そのもの一体をつい応援したくなる、そんな魅力的な映画なのです。

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2007/02/19

映画批評 映画王モリコラム 

和の心を応援する嘯氣堂:水墨画を毎週10枚プレゼントします

「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(1998/英)
映画監督というより、もしかして歌手のマドンナの旦那さんとしてのほうが有名かも知れないガイ・リッチー監督。しかし彼のデビュー作であるこの作品は、映画監督としての才能とセンスを確実に見せてくれている。マフィアを相手にしたポーカーで負けてしまい莫大な借金を抱えた若者の4人組。返済の期限が迫る中、彼らはある行動に出ることに・・・。映画は冒頭からクローズアップを多用し、茶色をトーンにしたスタイリッシュな映像処理とそれにかぶさるナレーションで一気に話が進んでいき、彼ら4人の行動によって登場する様々な個性的な人物が面白く、時には激しいバイオレンスが描かれるつつも全編にどこかとぼけたユーモアが楽しいクライム・サスペンスに仕上がっている。印象としては時制をバラバラにした展開やブリティッシュロックの多用のせいか、タランティーノ監督作品と「トレインスポッティング」を足して2で割ったような感じといえばいいか。ただあまりにもスピード感溢れる展開ゆえに、数多くの登場人物を整理し切れずやや混乱しないではなのだが(この辺りはテンポを重視した監督の確信犯的演出とも思えるのだが・・・)、彼らが織り成す多彩なエピソードが後半序々にパズルのピースがはまって行くかのような展開はかなりの見物であり、ある種のカタルシスを与えてくれることに成功している。ただこの作品があまりに鮮烈だったせいか、この監督のその後の作品の評判は今ひとつ。充分に実力と才能がある人と思えるだけに、一発屋と呼ばれないよう、今後の彼の捲土重来を期待したい。

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2007/01/27

映画批評 映画王モリコラム 「バウンド」(1996/米)

「バウンド」(1996/米)

かの「マトリックス」シリーズですっかりメジャーになってしまったウォシャウスキー兄弟監督。しかしこのシリーズより前に撮り、彼らのデビュー作でもあるこの作品は、決して派手さはないけれど、面白さ抜群のサスペンス映画に仕上がっている。マフィアの金をめぐってレズビアン2人と1人の男との争奪戦が、隣り合わせた部屋という限られた空間で二転三転するストーリー展開の中、快調なテンポと緊張感で繰り広げられてゆく。その先が読めない物語もさることながら、隣同士の部屋を俯瞰で横移動しながら人物のそれぞれの動きを捉えるショットなどその鋭角的というかスタイリッシュな画面構図が随所の見られ、密室劇でありながら空間演出の豊かさとこの監督の映像センスの良さは処女作から実証されている。そういえばこの映画も“電話” が登場。そのコードを舐めるように追いかけてゆくショット等今思えば「マトリックス」でもきっちり引用されてる。予算やジャンルは異なっても同じ監督の刻印が示されているようで興味深かった。

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2007/01/25

映画評論 映画王モリコラム 「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997/米)

「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997/米)

SF小説の名作として誉れ高い「宇宙の戦士」が原作のこの作品、私もこの小説は読んでいて、まぁ随分前の事だったから細かい箇所はあんまり覚えてないのだけれども、どうも映画化された作品と原作のイメージが違う。地球連邦軍と昆虫型のエイリアンとの宇宙戦争を中心に若き兵士達の戦いの青春を描くという大まかなラインにさほどの違いは感じないが、真面目な印象が強かった原作に比べ、映画版は何だかそのパロディとも思える程、この近未来戦争物語の背景を皮肉な視点で描き切り、それに加えて容赦しない残酷描写のグロテスクさがこの世界観にさらに拍車をかけている。何だかあまり褒めていないようだけれども実は個人的にはそんなこの映画が大好きなのだ。いかにもP・バーホーベン監督らしいシニカルな演出が、一見タカ派な戦争映画を装いつつ、同監督作「ロボコップの手法を交えながら、SFであっても戦争に対する胡散臭さをじわりと炙り出してくるあたり、好き嫌い分かれるクセのある映画かもしれないが、それだけに個性的で興味深い味わいのある作品だ。

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2007/01/24

映画批評 映画王モリコラム 「殺人の追憶」(2003/韓国)

「殺人の追憶」(2003/韓国)

今年も日本では続々と公開されている韓国映画だが、そのレベルの高さも大したもの。この作品も現在の韓国映画の勢いとパワーを実証するかのような魅力的な逸品だ。1986年に始まった連続猟奇殺人事件という実話を基に、刑事達の必死の捜査が描かれてゆく、と書くとありきたりな警察ドラマみたいだが、実際のこの事件、未だ未解決で犯人が捕まっていないのだ。そんなカタルシスを生みそうもない展開でありながら、それを逆手にとったかのように、映画は当時の韓国の政治的状況を絡めながら暗黒の深い迷宮に迷い込んだかのような不安感を醸し出し(それ故にクライマックスのトンネルのシーンは象徴的だ。)、社会的テーマを掲げながらその描写はきっちりエンターテインメントとして楽しめる配慮が調所に見られる。およそ殺人事件とは不釣合いとも思えるような田舎の美しい田園風景の画面の切り取り方も見事で、そのギャップが更にこの事件と人間の不可解さを浮き彫りにし、主人公のなんともいえない表情のアップで終わるラストがそれを物語っているようで実に印象的だ。

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2007/01/23

映画批評 映画王モリコラム 「イージー・ライダー」(1969/米)

「イージー・ライダー」(1969/米)

映画に関心を持ち始める前から、このアメリカンスタイルのバイク2台に乗った主人公達の姿を写したポスターの写真を見ていて、格好いいなぁ、なんて思っていた。その時はバイクを扱ったアクション系統の映画と思っていただけに、その後この映画を観た時はその自分のイメージと実際の内容のギャップに驚いてしまった。麻薬の密輸で稼いだ主人公2人がバイクに乗ってアメリカ大陸を南下してゆく。冒頭のステッペンウルフの「ワイルドで行こう」の歌に乗って2人がバイクで疾走するシーンは私がイメージしていた通りの心地よい爽快感に包まれたのだが、しかし彼らの旅が進んでゆくうちに段々物語は重苦しさを増してゆく。そこに描かれるのはアメリカの様々な恥部。自由で正義のアメリカという概念はもろくも崩れ、それらはもはや幻想でしかない事を見せつけられる。起承転結というより、雰囲気を重視した語り口が、映画の完成度とは別に時代の空気感をより際立たせている感じがする。よって彼らの末路があまりに唐突であったりするのだが、それだけに強烈な衝撃と同時に当時の時代への思いがストレートに伝わってくる。

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2007/01/22

映画批評 映画王モリコラム 「タンポポ」(1985/日本)

「タンポポ」(1985/日本)

私事で恐縮ですが、当時この映画に登場した半熟卵がとろ~りのオムライスが余りに美味しそうだったのが忘れられず、その後東京に行った時真っ先にこの“タンポポオムライス”を食べる為、日本橋の洋食屋「たいめいけん」まで足を運んでしまったという事でも思い出深い作品。さびれたラーメン屋を立て直すという物語を中心にしながらオムニバス風に語られてゆくその他の食にまつわるエピソードがユーモアたっぷりに描かれてゆく中、前述のオムライス然り、観ているだけで垂涎モノの料理が出てくるわ出てくるわ。ただ当時この映画を楽しみつつも、その食にまつわる作り手のある種のウンチク振りが多少鼻についた印象を持ってしまったのだけれども、グルメ情報が満載の現在観直してみたら、その感じが希薄になって素直に楽しむ事ができ、そう思うとこの作品は大袈裟だけど今を先取りしていたかもしれないと考えたりするし、いつの間にか「あの店の味は~」とか下手なウンチクを垂れてしまうようになっている今日この頃の自分に気がついてしまうのです。

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映画評論 映画王モリコラム 「エイリアン2」(1986/米)

「エイリアン2」(1986/米)

正直この映画を初めて観た時はびっくりした。前作は誉れ高いSFホラーの名作だが、その轍を踏まずに全く違うタッチで物語が進行するのだから。「今度は戦争だ」というキャッチコピーが見事に的を得たようなこの映画は見事な戦争バトルアクション映画に仕上がっている。今思うと前作のリドリー・スコット監督、そしてこの監督のジェームス・キャメロン監督の資質の違いがモロに反映されて興味深く、このシリーズのある意味作家に対する懐の深さを感じさせたりする。とにかく前作はたった1匹の未知の生物に右往左往する人間の姿が描かれていたのに対し、今作は出てくるは出てくるはその数、全く出し惜しみせず派手なバトルシーンが繰り広げられてゆく。その中でもきっちり女性の強さが描かれるあたりこの監督ならではと感じると同時に、ロボットの扱い方も前作と比べて、「ターミネーター」を撮った人らしい視点の違いが見られて興味深い。

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2007/01/21

映画批評 映画王モリコラム 「リバー・ランズ・スルー・イット」(1992/米)

「リバー・ランズ・スルー・イット」(1992/米)

ブラッド・ピットが一躍注目を浴びるきっかけともなった事でも知られるこの作品(この映画の監督でもあるロバート・レッドフォードの若い頃にそっくり!)。釣り好きの私個人としては、大自然の渓流を背景にしたフライフィッシングのシーンのあまりの美しさに息を呑んでしまった。仲の良い兄弟の青春と家族の絆を釣りを通じて描いたこの作品、といっても決して牧歌的展開を期待すると裏切られる。むしろ人間に対する作者の視点はある意味厳しい。特に次男を演じたB・ピットの、誰からにも愛され、かつ美しい青年が持つ人間の弱さからくる破滅を描く事で、あれだけ深い愛情と絆で結ばれていようとも、結局のところ彼を理解できず、そこから救い出す事が出来なかった家族の限界が描かれ、そのアメリカ映画とは思えない淡々とした語り口が、より一層家族の無念さを際立たせ胸を打つ。それら人物の繊細な描写と対照的で美しい自然風景が見事に調和することで、静かでありながら力強い感動を与えてくれる。

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映画批評 映画王モリコラム 「炎のランナー」(1981/英)

「炎のランナー」(1981/英)

ヴァンゲリスの音楽があまりにも有名なこの作品、冒頭で、曇天の砂浜をランナー達が走っている光景をバックに流れるテーマ曲はまさに鳥肌モノで、いきなりこの映画の素晴らしさを予感させてくれる。1924年のパリ・オリンピックの陸上競技出場を目指す2人の男。一人はユダヤ人という世間の偏見をバネに、もう一人は聖職者として神の為に走る姿が情熱的に描かれてゆく。とはいってもスポ根ドラマを連想すると肩透かしを喰らうかもしれない。(そうならないのはいかにも英国風か。)むしろドキュメンタリータッチを駆使したその語り口は地味で淡々としている。しかしその一見抑制されたそのスタイルが、美しいカメラワークと、競技シーンで時折インサートされるスローモーションが抜群の効果を上げ、静かながらも力強い感動を与えてくれる映画に仕上がっている。当然音楽の効果もその要因となっているのは言わずもがなである。

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2007/01/20

映画評論 映画王モリコラム 「ダイ・ハード」(1988/米)

「ダイ・ハード」(1988/米)

アクション映画の代表作として、この作品を挙げる人は多い。確かに当時の評判は物凄かった。現にあのキネマ旬報でも並居る芸術作品を差し押さえてその年のベストワンに選出されるほど、玄人素人問わず評価が一致した稀有な作品である。かくゆう私もその前評判の高さに過剰な期待をしていたのにも関わらず、やはりその面白さにすっかりのめりこんで鑑賞してしまった。超高層ビルを占拠した13人のテロリストVS 一人の刑事。この刑事が愚痴や弱音を吐きながらも一人一人敵を倒してゆく人間的なキャラクターは、シュワちゃんやスタローンなどマッチョなヒーローが活躍する作品を見慣れていたせいもあってか新鮮であったし、アクション映画数本分のアイデアを束ねたようなストーリー展開、そして劇中に散りばめられた伏線が見事に決まってゆくその快感、魅力的な悪役を含めた脇役陣にそれぞれ見せ場を設けるその配慮の巧さ、映画ファンが思わずニンマリしそうなやりとりもある無線を使ったセリフとその掛け合いの妙等15年を経た今でもその魅力は色あせていない。

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映画批評 映画王モリコラム 「荒野の決闘」(1946/米)

「荒野の決闘」(1946/米)

“西部劇の神様”とも言われたジョン・フォード監督。その中でも「駅馬車」と並んで評価されているこの作品、しかし「駅馬車」が西部劇としてダイナミズムに溢れたアクションに仕上がっているのに対し、こちらの作品は、西部劇として何度も映画化された主人公の保安官ワイアット・アープ、そして当然かのOK牧場の決闘を題材にしながら、西部劇のガンファイトの見せ場よりむしろ、実にロマンチックで詩情溢れる物語展開に魅了される。ここでは名ガンマンである主人公アープの、初めての一人の女性に恋してしまった男の純情振りが時に微笑ましく、時に切なく描かれる。床屋で香水を付けた後の弟とのやりとり、そしてその女性とのダンスシーンの画面構図のダイナミックさ、バーテンにさりげなく問うその一言等今でもこの作品を思い出すのはこれら主人公の恋模様が絡むシーンであり、それだけに彼が女性に発する自らの想いを抑えながら発する最後のセリフは恋愛に不器用な男の最大限の愛の表現として見事なまでの決めゼリフになり、その慕情がむしろ心地良い余韻を残してくれる。

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2007/01/19

映画王モリコラム「情婦」(1957/米)

和の心を応援する嘯氣堂:水墨画を毎週10枚プレゼントします

「情婦」(1957/米)

本来なら,この作品は何の予備知識もなく観たほうが良いと思うので、この作品を鑑賞する予定のある方は今からこのコラムを読まないほうがいいかもしれません。現にこの映画の最後には、“この作品の結末は決して未見の方に話さないでください”といったような内容が流れるのですから。何だかこの邦題では勘違いされそうですが、原作はアガサ・クリスティの「検察側の証人」(厳密にはこの原作を舞台化したものが映画の元になっているとの事)、こちらの方がこの映画のイメージに合うと思うのですが、内容は一言で言うと法廷劇。裁判を題材にした映画にはそもそも面白い物が多いですが、その中でもやはりこの作品の面白さは群を抜いていると言っても過言ではありません。裕福な老婦人を殺害した嫌疑をかけられた男を弁護することになった病み上がりでありながらも腕利きの老弁護士。しかしそんな優秀な彼もいざ裁判が始まるとその二転三転する事件の内容に翻弄されるのですが・・・。とにかく観ている観客の方も全く先の読めない展開のまま、物語は一気にクライマックスへ。そこで明かされる思わぬ事実に驚かされながら、その後に更にまたどんでん返しが・・・。その畳掛けるような語り口はさすが名匠ビリー・ワイルダー監督、しかも単に話の面白さだけでなく主人公の弁護士と、彼に付き添う看護婦とのやりとりがこの緊張感溢れるミステリーの中で絶妙なユーモアとなって温かみを与えているあたり、この監督の面目躍如の巧みさに唸らされますし、それ故彼ら2人の会話で締めくくられるラストも、事件の結末の後味の悪さを中和するかのように、実に粋で心地よい印象を与えてくれます。そんな魅力があるからこそ、1度観て結末は既に判っていても、つい2回、3回と観たくなる、単なるミステリーだけに留まらない芳醇な映画の醍醐味に溢れています。

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2007/01/18

映画王モリコラム「リトル・ミス・サンシャイン」(2006/米)

和の心を応援する嘯氣堂:水墨画を毎週10枚プレゼントします

「リトル・ミス・サンシャイン」(2006/米)

現在公開中のこの作品、決してお金を掛けたアメリカ映画ではないけれど、その愛らしさゆえ絶品の味わいを与えてくれました。物語は美少女コンテストに参加することが決まった娘の為に、家族である父母、兄、祖父そして叔父を含めた6人が家から遠く離れた会場へ黄色いおんぼろのミニバスでく道中からそのコンテストまでを描いた典型的なロードムービー。まずこの6人のそれぞれのキャラクターを実に手際よく紹介し、その後一同が会する食事のシーンでこの家族の問題を浮き彫りにさせる冒頭のわずか数十分間、このつかみだけでこの映画の世界が見事に凝縮されていて、それぞれ個性的な登場人物の特徴を最初に的確に把握することで感情移入でき、その後の展開を興味深く見守ることになります。そして「勝ち馬」を目指しながらも実は「負け犬」であるこのバラバラで崩壊寸前の家族の姿を、作り手の視線はあくまで淡々と客観的に描き、それ故に程好いユーモアと哀感が滲み出てきています。そんなある意味醒めたタッチこそが、クライマックスのコンテストに象徴される、アメリカの競争社会に対する皮肉を強烈なものにしていますし、そこでの思わぬ出来事が、これも皮肉な事に逆に家族の再生に繋がっていくのが、しみじみとした感動を与えています。6人の登場人物の誰もが本当に個性的で面白く、それぞれがきっちり1人立ちして描かれているのが、この作品の魅力に大いに寄与しており、それぞれに肩入れしながらも、いつの間にか最後はこの家族そのもの一体をつい応援したくなる、そんな魅力的な映画なのです。

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2007/01/13

映画王モリコラム「幸福の黄色いハンカチ」(1977/松竹)

「幸福の黄色いハンカチ」(1977/松竹)

この作品を気に入っている人は私の周りでもかなり多い。私も確か12~13歳位に初めて観たのだが、かなり感動した事は今でも覚えている。刑務所帰りの中年男と、2人の若いカップルとの道中が時にはユーモラスかつ抒情的に描かれてゆく。ここでは北海道の美しい自然を、車で移動してゆく事で余すところなく映し出し、かつ物語が進行するにつれて変化してゆく彼らの心情を、国土の狭い日本では難しいと思われるロードムービーという形をとりながら、見事に掬い出してゆく。ストーリーそのものは観客の想像した通りに進んでゆく、いわば予定調和的といってしまえばそれまでなのだが、それがこの作品の魅力でもあり、ラストの感動はその安心感があってのものでもあるし、中年男の愛の行方を見守るカップルの視線が、いつの間にか観客のそれと同一化し、判っていながらもついハラハラとさせて盛り上げてしまうあたり、心憎いまでの作劇の巧さに感嘆させられる。

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2007/01/12

映画王モリコラム「インファナル・アフェア 無間序曲」(2003/中国(香港))

「インファナル・アフェア 無間序曲」(2003/中国(香港))

■前作のヒットを受けて製作されたシリーズ第2弾。昨年日本でも公開された1作目は作品のクオリティも高く見応えのある作品だった。それだけに観る前は本国のヒットを受けてから急遽全3部作となったという事を聞いていたので、この作品にはあまり期待はしていなかったのだが、これが滅法面白い。前作以上といっても過言でないと思えるはどこの続編にハマッてしまった。

■物語は続編とはいっても1作目の前日談で、時代は香港の中国返還までの時代に遡って描かれるマフィアの抗争。前作でのマフィアに潜り込む囮警官と、一方は逆にマフィアから警察官として送り込まれる男、2人の若かりし姿が描かれてゆくのだが、今回はそれに関わる警視とマフィアのボスの描写により比重が置かれ、彼らの存在感が物語を実に芳醇なものにしており、複雑な人物関係を実に無駄なく前作を踏まえながら物語の中で処理してゆく演出と脚本には、これが決して付け刃な続編でないという製作者達の意気込みをも感じさせ、今から完結編にも期待せずにはいられない。

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2007/01/11

映画王モリコラム「砂漠の流れ者」(1970/米)

「砂漠の流れ者」(1970/米)

サム・ペキンパー監督といえばバイオレンス映画の巨匠として名高い一方、最後の西部劇監督ともいわれ、その中でもこの作品は、彼独特の派手な暴力シーンは皆無だけれども、まさに西部への思いがしみじみと胸に染みる佳作となっている。
西部の砂漠の中で仲間に裏切られた主人公は、瀕死の状態になりながら、奇跡的に井戸を掘り当て、そこで生活する事に。恋人も出来、全てが順調に進むと思われたのだが・・・。今回の主人公は今までのペキンパー映画に登場したヒーローと比べると、まったくうだつの上がらない中年男、しかも彼を取り巻く登場人物もどこか抜けていて、後半再び登場し主人公と対決する事になるかつての仲間達もユーモラスな雰囲気が漂い、そのタッチはこれがペキンパー映画?とさえ感じてしまう程、撃ち合いのある西部劇というより人情劇に近い趣があるのだが、主人公の末路はやはり、“時代遅れになった男”を描いてきた彼らしく極めて象徴的でほろ苦くもある。しかし登場人物達を見つめる暖かい眼差しがそのまま失われてゆく西部への思いと重なり、静かだが余韻のある感動を与えてくれ、やはり表現は違えどもペキンパーの映画ならではの味わいを感じるのである。  

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2007/01/09

映画王モリコラム「愛と宿命の泉」(1986/仏)

「愛と宿命の泉」(1986/仏)

2部構成で上映時間約4時間、本国フランスでは1部と2部を別にして上映されたらしいが、当時日本では一挙上映。さぞかし長丁場で疲れると思いきや、時間を忘れて物語に引き込まれ、大河ドラマの面白さを充分堪能した事は今でもよく覚えている。フランスの農村地方を舞台に、ひとつの水泉を巡って約10年に渡って繰り広げられる人間達の姿が描かれてゆく。ひとつの欲望から、嫉妬、憎悪そして苦悩や愛情と人間のあらゆる感情が物語が進むにつれまさに泉のように湧き出してゆき、そういった人間の愚かさと哀しみを対照的に際立たせるような美しい自然も印象的で、一見淡々とした物語展開もそれ故に、人生の縮図を見ているかのような気持ちにさせてくれる。しかも最後に主人公に明かされる事実がまるでギリシャ悲劇を思わせるような因果応報的な展開で、息を呑まずにはいられない。そこに運命に翻弄される人間の業さえ感じ、打ちのめされるような強く深い感動に見舞われる。

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2007/01/08

映画王モリコラム「CUBE」(1997/カナダ)

「CUBE」(1997/カナダ)

決してお金を掛けた大作でもなく、むしろお金を掛けなくともアイデア次第でいくらでも面白くなる映画の典型ともいえるのがこの作品。6人の男女が立方体の集合でできた部屋に閉じ込められる。出口を求めて彼らは各部屋を渡っていこうとするがそこにはそれぞれ異なった罠が仕掛けられ・・・。何の理由も説明されず開巻からいきなり始まる不条理ともいえる物語展開、次の部屋はどんな仕掛けがなされているかという何が起こるか判らない展開はまるで観ている我々も登場人物と同一体験しているかのような、いわゆるゲーム感覚要素を持つ一方、後半はその緊張感と閉塞感で分裂してゆく登場人物の姿を絡めながらノンストップで一気に観せ切る手腕は大したもので、セットのデザインや色彩等の独特なビジュアルセンスが、限られた狭い空間だけの世界に彩りを与え,そこには低予算を感じさせない豊かな映画の魅力に溢れている。

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映画王モリコラム「オールド・ボーイ」(2003/韓国)

「オールド・ボーイ」(2003/韓国)

以前このコラムで2004年上半期新作のマイベスト5を発表させて頂きましたが、外国映画で3本が韓国映画になってしまい我ながら驚いてしまったのですが、下半期も私にとって“韓流”パワーは留まる事を知りません。日本の漫画を原作にしたこの作品もとてつもない勢いでもって圧倒されっ放しでした。何故か15年間監禁された男が今度はいきなり何故か釈放され・・・。誰が、何の為に?復讐の鬼と化した男は真相を探っていきますが・・・。スピード感溢れる物語展開と、痛覚を刺激するかの様な荒々しい暴力描写がありながらスタイリッシュで美的感覚さえ感じる映像(特に主人公が十数名相手に戦うシーンを捉えた横移動のロングショット!)に魅入られつつ、追い討ちを掛けるようなラストの展開に驚愕!その緩急自在ともいえるサスペンスミステリーの作劇が堪能できる一級の娯楽作品でありながらも、鑑賞後はむしろ、登場人物達の愛のドラマとしての余韻が残り、その哀しみと切なさにも更に胸を打たれてしまうのです。☆   

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2007/01/07

映画王モリコラム「ジャッカルの日」(1973/米)

「ジャッカルの日」(1973/米)

F・フォーサイスの原作も余りに有名なこの作品、初見時、これはてっきり実話の映画化と勘違いしたほどそのリアルな展開に引き込まれてしまった。時のフランスのドゴール大統領暗殺の命を受けた一人の殺し屋“ジャッカル”。それを知った警察側の捜査がまるでドキュメンタリーを思わせるようなシンプルかつ冷静なタッチで描かれてゆく。到底殺し屋とも思われない紳士然とした男が着々と深く静かに暗殺計画を進行させようとする姿と、わずかな手掛りを頼りに、しかし少しずつ暗殺者を追い詰めてゆく一人の警視をシンクロさせながら、この2人の暗殺決行の日までの丁々発止の攻防戦を、その職人芸ともいえる見事な演出で観るものをグイグイと引っ張ってゆく。その展開はむしろ淡々とした地味な印象さえ与えてしまうほどのものだが贅肉を削ぎ落とした様な無駄の無さがシャープな緊迫感を否が応に醸し出し、派手なアクションシーンがなくても充分にサスペンスを堪能できる上質のエンターテインメントに仕上がっている。

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2007/01/06

映画王モリコラム ゴッドファーザー 映画批評

ゴッドファーザー(1972/米)

■マーロン・ブランド逝去。このニュースを知った数日前に偶然リバイバルでこの作品を観直した直後だっただけに少なからずショックだった。

■当然彼の代表作の1本としては勿論、映画史上にも燦然と輝くこの名作、私もビデオを持っているのにも関わらず、劇場でこの作品が掛かっているとつい、映画館まで足を運んでしまうほどで、その度に新しい発見があったりして、改めて感動してしまう。

■今更この映画の魅力を語るなんて野暮かもしれないが、イタリアマフィアの非情な世界とその抗争を激しいバイオレンスシーンを交えて描きつつ、それと二律相反するかのような彼らの深い家族愛がニーノ・ロータのあの余りにも有名なメロディと共に抒情的に奏でられる。

■その中でもブランド扮するマフィアのボスの、その2つの世界の狭間で苦悩する姿が彼の圧倒的な存在感と相まって強烈な印象を残こす。その他この映画の魅力を語りだすときりがない。

■今度は彼の冥福を祈る意味を込めて、もう一度劇場へ、とつい思ってしまうど、その重厚かつ骨大なドラマに心酔させられる。

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映画王モリコラム 家族ゲーム 映画批評

「家族ゲーム」(1983/日本)

もはや日本映画界では巨匠の感さえする森田芳光監督。彼が最初に本格的な注目を浴びるようになったこの作品は、当時若手だった彼の才気が溢れんばかりのユニークな作品に仕上がっている。高校受験の息子を持つある4人家族の家を訪れることになる、なぜか植物図鑑を手にした家庭教師(松田優作!)。彼の出現がこの家族の在り方に影響をもたらしてゆく事で、その虚構性が露になってゆく展開を、横一列のテーブルでの食事風景に象徴されるように、決してお互いを正面きって対峙しようとしない家族を醒めた視点で描いてゆく。ボソボソとした会話の絶妙のやりとり等がデフォルメされているのにも関らず、時として妙にリアリティを感じてしまう、その不思議な感覚が不気味なユーモアを漂わせ、ある意味出色のコメディともいえるのだが、結末を放棄したかのようなラストのヘリコプターの音が単なるブラックコメディの域を超え、観客に拠り所を与えない余韻を与えてくれる。

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映画王モリコラム ガメラ 大怪獣空中決戦

「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995/大映)

物心ついた頃から怪獣が大好きだった私。当時大阪の玉造にあった近所の映画館へよくゴジラシリーズを観に行った事は今でもよく覚えている。で、平成になり、すっかり大人になった私だが、この新しく製作された怪獣映画には、少なからずも驚かされた。従来の怪獣映画のパターンを踏襲しつつも、先代のイメージを一新したガメラ等怪獣の設定、そして日本に本当に怪獣が現れた場合に一体どうなるのかという点をまるでシュミレーションしたかのようなリアリティを感じるディテールが新鮮で、“怪獣映画=子供向け”という先入観を見事に覆す、大人も楽しめる展開の映画に仕上がっているのが嬉しい。この作品を製作したスタッフの、かつての怪獣映画に対してオマージュを捧げながらも、彼らなりの新しい怪獣映画を作ろうとする意気込みを随所に感じ取ることができ、ある意味パターン化されたこの手の映画に対するアンチテーゼともとれ、今迄の怪獣ファンの方はその差異を確認することも楽しみとして鑑賞できるかもしれない。

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映画王モリコラム 天国と地獄

「天国と地獄」(1963/東宝)

日本のみならず、世界の映画史に於いても燦然と輝く巨星といっても過言でない黒澤明監督。特に1950年代から60年代に作り出された数々の作品は娯楽映画としても群を抜いた面白さ。この作品も社会的テーマを掲げながら、一級のエンターテインメントといえる見事な名作。

骨格は誘拐犯罪を追いかけるサスペンス映画なのだが、前半1 時間で一箇所の室内のみの会話で、数多い登場人物のキャラクター像やシチュエーションをじっくり紹介したかと思うと、一転、室外での身代金受渡しのシーンになる場面展開の鮮やかさとスリル溢れる展開に一気に引き込まれる。
後半は犯人を追いかける警察の姿をサスペンスフルに描き、そして被害者と犯人との1対1と対決(!)で締めくくるラストまで構成も緻密で隙がない。それでいて画面作りは極めてダイナミックな迫力に溢れ、突如現れる実験的ともいえるかの有名なシーンも(昨年大ヒットしたあの映画の1作目で見事パクってましたね)その勢いあるパワーによって違和感よりも、むしろ驚きと感動を与えてくれるのである。

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映画王モリコラム「遊星からの物体X」(1982/米)

「遊星からの物体X」(1982/米)

日本でも一部に熱狂的ファンがいるJ・カーペンター監督。私自身は特にファンというほどでもないけれど、中学生の時にこの作品を劇場で観た時はさすがにびっくりした。南極基地を舞台に、生き物に寄生する謎の生命体に襲われてゆく人間達、いわゆる宇宙人による地球侵略物なのだが、とにかく“物体X”の変身シーンのグロテスクさが凄い。まるで観客の生理的嫌悪感を催す様なものをこれでもかと集めたようなグチャグチャドロドロした描写のオンパレード(特に冒頭近く、いきなり犬の○×が・・・これには飛び上がってしまった)で、その特殊効果はCG全盛の現在と比べると当然見劣りする部分もあるだろうが、その粘液的質感覚は捨てがたいものがある。その一方この作品には誰が寄生されているか判らないといった人間同士の不信感がサスペンスを生み出し、単調でありながらこの作品のムードを実に的確に捉えた音楽(E・モリコーネ!)の不気味さが更に作品に味を加えてくれている。

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2007/01/05

映画王モリコラム「ロンゲスト・ヤード」(1974/米)

■「ロンゲスト・ヤード」(1974/米)

■数あるスポーツ映画の傑作の中でも、この作品は痛快さという点に於いて群を抜いた面白さ。

◇物語は刑務所を舞台に看守対囚人のアメリカンフットボールの試合が描かれてゆくのだが、状況が状況だけに、健全なスポーツ競技になる訳がない。特に囚人側は日頃のうっぷんを晴らす絶好の機会とばかり、いかにゲーム中に相手をぶちのめしていくかという辺りがユーモアを誘いながらも、一方刑務所物のドラマとして、ハードな男臭さ充満の世界が展開されている。

◇特にクライマックスでの迫力あるゲームシーンを通して浮かび上がってくる男の心意気が胸に響いてくるあたりは、さすが硬派映画の雄ロバート・アルドリッチ監督の独壇場。
◇アメフトをよく知らずとも充分楽しめるは勿論だが、単なるスポーツ映画の面白さを超えて、人間ドラマとしても感動を与えてくれる、この監督の娯楽性と作家性の見事なバランスはもっと評価されるべきではないかと思うのは私だけだろうか。

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映画王モリコラム 「コレクター」(1965/米)

■「コレクター」(1965/米)

「ローマの休日」「大いなる西部」「ベン・ハー」等どんなジャンルの作品でも名作にしてしまうウィリアム・ワイラー監督。その彼の輝かしいフィルモグラフィーの中でも何だか異色とも思えるこの作品だが、それでも彼の職人的手腕が充分に堪能できる秀作。蝶の収集を趣味とする銀行員が、まるでその延長のように一人の女性を監禁し、自分の所有物にしてしまおうとする・・・。異常心理を扱った今でいう“ストーカー”物のサイコサスペンスなのだが、T・スタンプ扮する主人公の男の底知れぬ程の孤独と冷徹さを兼ね備えたその目線の恐ろしさといったら。決して残酷なシーンがあるわけでもないのに、人間の怖さがじわりと伝わり、特にラストに流れる主人公のモノローグは、人間のダークサイドをモロに突きつけられたようで背筋が寒くなる思いがするが、それが決して露悪的に感じないところもさすがこの監督と思わせる腕前である。ちなみ数年前にM・フリーマン主演で同名のタイトルの作品が公開されましたが、この作品とは何の関連もありません、一応、念の為。

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映画王モリコラム「ゴジラ」(1954/東宝)

「ゴジラ」(1954/東宝)

私の映画体験はゴジラで始まったといっても過言でないほど、幼い頃“東宝チャンピオン祭り”と銘打たれたこのシリーズを映画館で観るのを楽しみにしていた事は今でも懐かしい。しかしその頃既にカラー画面で正義の味方と化していたゴジラに馴れ親しんだ後に、このモノクロの第一作を観たときはやはり今迄とは違うイメージに驚かされたと同時に大変怖くて冷静に観ることができなかった。その後、大きくなってから劇場で再見し、その時はさすがに初見時ほどの怖さは感じなかったが、年を経て今度は逆に新鮮な驚きを感じてしまった。ゴジラの徹底的な暴れ方が当然の見せ場とはいえ、放射能を浴びた巨大怪獣の上陸による破壊によって、当時外見は戦後から復興の兆しを見せながら、未だに戦争を心の中でどこか引きずっている昭和29年における日本人の描写に、実にリアリティを感じてしまったのだった。それだけにラストの芹沢教授の行動にはすっかり感情移入してしまい、これが怪獣映画であることをすっかり忘れて、その結末につい涙してしまうほど、ドラマの方に感動してしまうのである。さてこのゴジラも今度の新作でシリーズ終了とか。最後に相応しい感動をまた期待したい。

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2007/01/04

映画王モリコラム「ザ・フライ」(1986/米)

「ザ・フライ」(1986/米)

1958年に製作された「蝿男の恐怖」をリメイクしたこの作品、原版はTVで観て、 B級でありながらそれなりに楽しめる作品ではあったのだが、今回この作品は当時より飛躍的に進化したメーキャップ技術等の特殊効果も含めて、A級のホラー映画に仕上がっている。物質転送装置の中に主人公と蝿が同時に紛れ込んだばかりに両方の遺伝子が融合し・・・という物語の骨格は大異はないが、リメイク版は前述の技術を駆使して、人間が変化してゆく姿を、まるで何かの病気が進行していくかのようにじっくり描きだす。時としてグロテスクでショッキングな描写で気味悪くなるようなホラー的要素を味わいながら、その一方主人公の肉体と同時に心の変化をも的確に描き出す事で、恋人との絡みは出色のラブストーリーとしても成立しており、それ故にラストの悲壮感には胸を打たれる。私個人、この監督の前作「デッド・ゾーン」(これも傑作!)のラストにもダブってしまい、更に哀感を募らせてしまうのであった。

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2007/01/03

映画王モリコラム「2004年新作映画のベストテン」

今年もいよいよあと僅か、という事で1年を振り返るという意味で2004年に観た新作映画のベストテンをモリの独断と偏見で選んでみました。今週は日本映画編で。 ① ジョゼと虎と魚たち②誰も知らない③血と骨④ヴァイブレータ⑤花とアリス⑥69⑦ハウルの動く城⑧お父さんのバックドロップ⑨スウィングガールズ⑩リアリズムの宿  興行面でも話題になった「世界を中心で、愛をさけぶ」など、今年の邦画は恋愛をテーマにした作品に印象深いものが多く、私のベストでも①④の他、「透光の樹」も捨てがたい魅力がありました。地方色を活かした作品も多かったのも今年の特徴で ⑥⑨はその方言も映画の魅力となりえていました。ロケ地を積極的に誘致するフィルムコミッションの効果の現れでしょうか。今後もその動きに期待したいと思います。 ⑧に関しては原作者で今年亡くなった中島らも氏の愛読者であった私にとっては愛すべき作品に仕上がっており、彼への哀悼の意も込めて、選ばさせていただきました。外国映画編は次週にて。

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2007/01/02

映画王モリコラム「2004年に観たモリが独断と偏見で選ぶ新作映画のベストテン」

先週に引き続き2004年に観たモリが独断と偏見で選ぶ新作映画のベストテン、今週は外国映画編として10本選ばさせて頂きました。 ①殺人の追憶②インファナル・アフェア無間序曲③オールド・ボーイ④ビッグ・フィッシュ⑤スクール・オブ・ロック ⑥春夏秋冬そして春⑦ビハインド・ザ・サン⑧悪い男⑨Mr.インクレディブル⑩オアシス  以前このコラムで上半期ベスト5を選出した際にも触れましたが、結局韓国映画が①③⑥⑧⑩と半分を占めてしまい、私にとって改めてこの国の映画のパワーに圧倒された1年でした。これが一過性のものか否かは現状判断はつきかねますが、 ①③は才能ある人材が確実に育っている感じがしますし、他にも⑥⑧のキム・ギドク監督のある種アクの強い作家性に今後も注目してゆきたいと思います。一方アメリカ映画は今年も印象が薄く、世評の高い「ミスティック・リバー」も作品の力は認めつつも、その重苦しさに今ひとつ乗れず、それだけ余計に⑤の楽しさが特筆ものに感じました。という訳で今回で今年最後のコラムとなりました。読者の皆様、よいお年を。

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2007/01/01

映画王モリコラム「カンフーハッスル」(2004/中・米)

「カンフーハッスル」(2004/中・米)

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。という訳で今年最初のモリコラムは日本では約35年振りという元旦から封切のこの作品から。前作「少林サッカー」ですっかり日本でもすっかりメジャーとなったチャウ・シンチー。前作が破天荒なほどの驚きと面白さを感じた私にとって今作を観る前は少し不安もありました。しかしそれは杞憂に終わったといっていい程、今回も充分楽しませて頂きました。今回はカンフーを題材に、奇想天外なアクションが前作同様CGを駆使して繰り広げられていきます。ユニークなキャラクター等、前作を連想するシチュエーション、キャストのせいもあるのか前作程の新鮮な驚きこそははさすがに感じませんでしたが、逆に映画としてのまとまりはこちらのほうが上に感じ、そのストレートな展開に、途中から安心して観る事ができました。やや過激なシーンや死人が多いのが少し気にはなったのは事実ですが、それを除けば、何も考えずに理屈抜きに楽しめるという点においても、お正月映画としてはうってつけのお勧めできる作品に仕上がっています。

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2006/12/31

映画王モリコラム「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984/米・西独)

和の心を応援する嘯氣堂:お年賀に水墨画を毎週10枚プレゼントします

「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984/米・西独)

この映画を初めて観たとき、すごく戸惑ってしまった。当時はメリハリのある娯楽映画ばかり観て来たからだろうか、この何も起こらないといっていい物語展開、そしてモノクロの映像、正直なところこれはきっと退屈で寝てしまうだろうなぁと最初は思いながら観ていた。ところが映画が進むにつれ、この恐ろしいほど淡々とした場面の連続でありながら、それらを区切ってゆくゆるやかな暗転が妙に心地よくなってゆき、いつの間にかこの映画の空間にどっぷりハマッてしまっている自分に気付いたのだった。よってこの映画の魅力を言葉にするのは本当に難しい。要約すれば男2人と女1人のすれ違いの青春ドラマ。

しかしそこにはその定石ともいえる血と汗と涙の物語として決して描かれない。この作品では青春といえども殆ど退屈で平凡な日常の繰り返しであり、決して美しく格好良いものでもない。そう考えるとこの映画は青春=熱血といったパターンに対するアンチテーゼともとれるし、当時十代だった私にとって登場人物のある種の倦怠感に逆にリアリティを感じ、限りない共感を抱いてしまったという点において、やはり忘れられない愛着のある作品である。

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2006/12/30

映画王モリコラム:2006年外国映画ベストテン

和の心を応援する嘯氣堂:お年賀に水墨画を毎週10枚プレゼントします

[2006年外国映画ベストテン]

先週に引き続き、モリが独断と偏見で選ぶ2006年新作映画ベストテン、今回は外国映画の10本。
①クラッシュ
②うつせみ
③メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬
④キング・コング
⑤ユナイテッド93
⑥グエムル 漢江の怪物
⑦ブレイキング・ニュース
⑧ココシリ
⑨硫黄島からの手紙
⑩弓  
上位①~⑦までは以前このコラムで紹介させて頂いたので、各作品についての細かい言及は避けますが、選んでみたらアメリカと韓国映画と中国(香港を含む)の映画ばかりになってしまい、我ながら驚いてしまいました。とはいってもハリウッド大作に代表されるアメリカ映画は全体的には決して好調とはいえないのが残念で、シリーズ物とリメイク版ばかりといった印象で鮮味なく、日本での興行的な落ち込みもそれを反映していると思えます。(現に①③は監督デビュー作でインディペンデ