映画批評 映画王モリコラム
「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(1998/英)
映画監督というより、もしかして歌手のマドンナの旦那さんとしてのほうが有名かも知れないガイ・リッチー監督。しかし彼のデビュー作であるこの作品は、映画監督としての才能とセンスを確実に見せてくれている。マフィアを相手にしたポーカーで負けてしまい莫大な借金を抱えた若者の4人組。返済の期限が迫る中、彼らはある行動に出ることに・・・。映画は冒頭からクローズアップを多用し、茶色をトーンにしたスタイリッシュな映像処理とそれにかぶさるナレーションで一気に話が進んでいき、彼ら4人の行動によって登場する様々な個性的な人物が面白く、時には激しいバイオレンスが描かれるつつも全編にどこかとぼけたユーモアが楽しいクライム・サスペンスに仕上がっている。印象としては時制をバラバラにした展開やブリティッシュロックの多用のせいか、タランティーノ監督作品と「トレインスポッティング」を足して2で割ったような感じといえばいいか。ただあまりにもスピード感溢れる展開ゆえに、数多くの登場人物を整理し切れずやや混乱しないではなのだが(この辺りはテンポを重視した監督の確信犯的演出とも思えるのだが・・・)、彼らが織り成す多彩なエピソードが後半序々にパズルのピースがはまって行くかのような展開はかなりの見物であり、ある種のカタルシスを与えてくれることに成功している。ただこの作品があまりに鮮烈だったせいか、この監督のその後の作品の評判は今ひとつ。充分に実力と才能がある人と思えるだけに、一発屋と呼ばれないよう、今後の彼の捲土重来を期待したい。
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