映画王モリコラム「愛と宿命の泉」(1986/仏)
「愛と宿命の泉」(1986/仏)
2部構成で上映時間約4時間、本国フランスでは1部と2部を別にして上映されたらしいが、当時日本では一挙上映。さぞかし長丁場で疲れると思いきや、時間を忘れて物語に引き込まれ、大河ドラマの面白さを充分堪能した事は今でもよく覚えている。フランスの農村地方を舞台に、ひとつの水泉を巡って約10年に渡って繰り広げられる人間達の姿が描かれてゆく。ひとつの欲望から、嫉妬、憎悪そして苦悩や愛情と人間のあらゆる感情が物語が進むにつれまさに泉のように湧き出してゆき、そういった人間の愚かさと哀しみを対照的に際立たせるような美しい自然も印象的で、一見淡々とした物語展開もそれ故に、人生の縮図を見ているかのような気持ちにさせてくれる。しかも最後に主人公に明かされる事実がまるでギリシャ悲劇を思わせるような因果応報的な展開で、息を呑まずにはいられない。そこに運命に翻弄される人間の業さえ感じ、打ちのめされるような強く深い感動に見舞われる。
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