映画王モリコラム「幸福の黄色いハンカチ」(1977/松竹)
「幸福の黄色いハンカチ」(1977/松竹)
この作品を気に入っている人は私の周りでもかなり多い。私も確か12~13歳位に初めて観たのだが、かなり感動した事は今でも覚えている。刑務所帰りの中年男と、2人の若いカップルとの道中が時にはユーモラスかつ抒情的に描かれてゆく。ここでは北海道の美しい自然を、車で移動してゆく事で余すところなく映し出し、かつ物語が進行するにつれて変化してゆく彼らの心情を、国土の狭い日本では難しいと思われるロードムービーという形をとりながら、見事に掬い出してゆく。ストーリーそのものは観客の想像した通りに進んでゆく、いわば予定調和的といってしまえばそれまでなのだが、それがこの作品の魅力でもあり、ラストの感動はその安心感があってのものでもあるし、中年男の愛の行方を見守るカップルの視線が、いつの間にか観客のそれと同一化し、判っていながらもついハラハラとさせて盛り上げてしまうあたり、心憎いまでの作劇の巧さに感嘆させられる。
この記事へのコメントは終了しました。
コメント