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2006/07/28

映画王モリコラム:ゆれる

「ゆれる」(2006/日本)

西川美和監督の前作でありデビュー作である「蛇イチゴ」は対照的な兄妹を中心に家庭の崩壊を描き、その新人離れした演出と脚本の巧さに感心した。そのせいもあって2作目となる今作もかなり期待していたので、公開すぐさまストーリー等の予備知識殆どなしで劇場に駆け込んだのだが、私の期待を遥かに上回るばかりか、間違いなく本年の日本映画を代表する傑作である。東京で写真家として成功している自由奔放な弟、一方地方の実家で家業を継いでいる真面目な兄、母の1周忌で帰郷した弟は、兄と幼馴染の女性と3人で、兄弟が幼い頃に両親に連れて行ってもらった渓谷へ赴くのだが、そこで予想もしなかった出来事が・・・。

今回もこの監督は性格も生き方も正反対の兄弟をモチーフに、この2人の内面をじっくり掘り下げることによって複雑な人間の深層心理を見事にあぶり出していく。一見仲が良さそうに見える兄弟がある事件をきっかけにお互いに対する愛憎をぶつけ合うようになるプロセスは後半は一転、裁判劇という形をとることによって更に緊張感を高めるが、それが謎解き、所謂事件の真実探求の面白さというより、兄弟2人の、まさに渓谷の架かった吊り橋が象徴するかの如く、不安定な心の“ゆれ”こそがサスペンスの原動力となり、それがオダギリジョー、香川照之の見事な演技を通して物語を引っ張って行く。と同時に複雑な “藪の中”的な展開に観客の心理も不安定なまま”ゆれる”。その不条理な展開は物語を決して安易な着地点に導かず、戸惑いながらもその世界観に魅了されるのだが、そんな迷路のような複雑な人間の内面を映像化したこの監督の繊細な人間観察、洞察力はさりげないワンショットの映像にも見事に表現されていて、 32歳とは思えないこの監督の力量に唸らされてしまった、す、凄い。

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